時の環

足元を見ない電車

胸元を見ない手紙




鏡を知らなかった時計

暦を知らなかった生命




全ては薄くて堅いガラスの向こうへ

手も声も届くことはない場所へ




ごめんなさい、ごめんなさいと

何処にも行けなかった両足が泣いている

悪いのは夢を見た僕の方だよと

何処からか寂しげな声が聞こえた




舵取りのいない星は巡っていく

終わりは始まりへと帰っていく




人形が人形を作ったとき

自らも人形であることを知った