生きる人


ある日、遥か空の上から

1本の細いロープが下りてきた

いかにも頼りなく

すぐに切れてしまいそうだったが

その結び目に足をかけ

上ってみることにした




しばらく上っていくと

若い声が聞こえてきた

「この上には何も無い。引き返しなさい」

それでも上り続けた




すでに地上は遠く

まだ見えてこないロープの先端




更にしばらく上っていくと

今度は大人びた声が聞こえてきた

「いつ切れるかわからない。引き返しなさい」

それでも上り続けた




すでに地上は見えず

雲に閉ざされている視界




またしばらく上っていくと

今度は老いた声が聞こえてきた

「力はもう残っていない。引き返しなさい」

それでも上り続けた




何気なく上り始めたロープ

いつかは切れるだろう

でも

まだ上ることができる




そして今日もまた

ロープを上り続ける