全てのイカロスの為に


黒い雲から降り続ける雨に打たれて

僕は空を見上げていた

そこへと上がっていったモノは

一体何だったのだろうかと

そこから零れてしまったモノは

一体何だったのだろうかと

雨粒となって空に斜線を刻む最期を

僕はそこで看取っていた




寂しいばかりのモノが集い

やがては一個の雲となる

そこから青空を見上げ

そこから大地を見下げ

行き先もなく漂っていく

人々はそれを憧憬するけれど

僕は知っていた

空と地の中間に位置するそれらが

その両方に憧れていることを




もしかしたら、と僕は思う

雲になったモノはとうとう我慢し切れずに

この大地へと飛び降りたのではないかと

白く穏やかにいられないほど

黒く心乱して




選べる場所は一つだけ

眺めた景色の半分には届くけれど

もう半分の景色には届かない

空に手を伸ばすには

太陽が眩しすぎたのだろうか

かつて昇った翼は

漂ううちに溶けてしまったのかもしれない




ここで本当に良かったのか

僕は時々、地面ではねる雨粒に訊いてみる

灰色の濃淡で作られる世界の中

雨粒は迷った挙句

多くの音に紛れながら曖昧に頷くのだった




僕はその答えを勝手に切なく思って

勝手に祈りを続ける




零れていく黒い雲と

集っていく白い雲へ




青へ向けて、もう少しだけ