ここから眺める空は高い
でも、ここではない別の場所から眺めても
やっぱり空は高いのかもしれない
昔見た空は忘れてしまったから
呑気な陽、穏静な風、豊饒な地、精粋な水
それさえあれば幸せだと
素直に言えたはずなのに
何故、自分は蝶ではないのだろう
強く支えようと深く根を伸ばした
大きく誇ろうと広く花を咲かせた
蝶たちの物語を聞いた
蜂たちの世界を聞いた
一体、自分は何がしたかったのだろう
今更、掘り返してくれとは
今更、削ぎ落としてくれとは
稚拙に無残で言えるはずもない
自らが花であることを
自らが蝶でないことを
否定するのは悲しすぎる
諦めるだけでなく諦め続けて
悔やむだけでなく悔やみ続けて
嘆くだけでなく嘆き続けて
それでも、長い長い繰り返しの後
やがて、気付いた
気付くことができた
言えなくても、想えることはある
叶うかも分からない無謀な希望と
避けるべき先のない未来
いつか、花は散る
その時、神の恵みのような強い風が吹き
幾つかの花びらが空を舞うとしたら
空を綺麗に飾り、少しでもそこへ近づけるなら
諦めることを諦め
最期さえも望んでみせよう
ここから眺める空は遠い
でも、ここではない別の場所から眺めても
やっぱり空は遠いのかもしれない
届かないと思っている限りは