ある夏の日


ふと目覚めると窓から入る風に

ちりん、ちりん

耳へと届く風鈴の音

一緒になって揺れるカーテンは

早朝のオーロラ

幻想よりも暖かい白色




とん、とん、とん

誰もいない階下へと下りる中

追ってくるのは寂しさではなく

終わらない蝉の声

二本の腕では抱えきれないものを

共に捕まえて




生温い空気を網戸が隔て

覗く猫の目に着替えた人間の姿が映ると

首を傾いで悩み顔

「にゃあ?」

一体、何点をつけたんだい?

居間に活けられている菊の花

無邪気に無垢に純真に




玄関から出て空を仰げば

白い雲がゆったりと泳ぐ晴天

強くなってきた真っ直ぐな太陽の光に

きらきらと輝いているのは

目を背けたいほど大切な

胸に刺さったままの欠片たち