甘くてあったかい宝物


苦い思い出には

真っ白い粉砂糖をかけて溶けるのを待っている

ゆっくり、ゆっくり、かきまぜて

ほんの少しでもこぼれてしまわないように

でも、それでも苦い時には

甘い幸せを取り出してきてしばらく抱えてみる

色褪せそうで滅多に外には出さないけれど

そうやって時には眺めながら

時と共に被ったホコリを落としてやる




どうして、とか、なんで、とか

それらは走ることを止めない鈍色の鎖

縛られていなければ何処までも落ちていってしまいそうで

あまりにも自由過ぎた世界が怖かった

長い間、とても長い間、頼り続けていたけど

今も残る鎖の痕

だけど今では代わりに想いが包み込んでいる

そんな想いが訪れてくれた




あったかいよね、と君は言った

さむいよ、と僕は言った

頼りなくモヤモヤした世界が嫌いだったから

頑丈でハッキリした世界に住み続けていた

強く、堅く、冷たい、銀色の鉄の世界

でも、なんでだろう

望んだはずの世界は何かが違っていて

そして、君に逢った

だから、僕は君と一緒にこう言うことができたんだ

――あったかい




想いは幸せになって仕舞われ

一見すると元の輝きを失ってしまったように見えるけど

哀しさや寂しさを感じる必要はない

こうやってホコリを落としてみると

こうやって胸に抱えてみると

ほら、中から外からふんわりと満たされる

泣きたいほど優しい感触で包まれる